調停で取り決めた婚姻費用の減額の可否

別居中の生活費となる婚姻費用について,いったん調停で取り決めたものの,その後に事情が変わった場合に,婚姻費用の減額は認められることがあるでしょうか。                      別居期間が長期化する場合,婚姻費用を取り決めたときから,夫婦双方の状況が変化し,取り決めた婚姻費用のままでは不公平に感じられる場合もあります。                         そのような場合,婚姻費用の減額等が認められることはあるのでしょうか。              名古屋高等裁判所平成28年2月19日決定(「家庭と法の裁判」2017年1月号50頁)を参考に,検討してみたいと思います。

この決定では,以下の事実関係のもと夫が婚姻費用の減額を求めたのに対して,結論として,婚姻費用の減額を認めました。                                       ⑴ 婚姻費用負担義務を負うのは夫,夫の不貞行為が原因で妻が心身不調を訴え,H21年に妻は単身転居(その後H21年中に子ども二人と同居),夫は不貞相手と転居                   ⑵ 婚姻費用について,H22年〇月~〇月まで月15万円,〇月から〇月まで月35万円,〇月から同居または婚姻解消まで月50万円とする内容で,H21年〇月〇日調停成立                   ⑶ 夫は,H22年〇月〇日子1人,さらにH26年〇月〇日に子2人をもうけ,認知済 

夫の主張                                           ① 別居が長期化(5年程経過)しており,婚姻関係の破綻が決定的である場合には,妻の生活費は,5割程度の額に制限されるべき。                                   ② 前回調停時,月50万円の婚姻費用の支払を約束したのは,妻が別居後に落ち着いて仕事を始められる十分な期間を定めて支払う趣旨であり,別居解消または離婚までの間,無限定に50万円を支払うものではない。                                             ③ 婚姻関係破綻後に,3人の非嫡出子をもうけ,扶養義務を負っており(実際非嫡出子の1人に月15万円の養育費を支払っている),これらの扶養義務が発生したときから当該事情を考慮すべき。      ④ 妻が潜在的稼働能力を有することを前提に婚姻費用は算定すべき。

*原審(岐阜家庭裁判所中津川出張所)の判断

結論として,婚姻費用の減額を認めず。離婚するまでの間は,妻に対し,婚姻家庭の社会的地位,収入等に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用,すなわち相当額の婚姻費用を負担する義務(生活保持義務)を負う。

夫の主張①について                                       婚姻関係が破綻し,又は破綻に瀕した夫婦の間において,婚姻費用の分担義務を軽減すべき場合があると解される。しかし,夫が不貞行為に及んだことがきっかけで別居に至っている本件で夫が婚姻費用分担義務の軽減を求めるのは,明らかに信義に反する。

夫の主張②について                                       主張を裏付ける証拠はなく,仮に主張を裏付ける証拠があったとしても当然に減額が認められるものではない。

夫の主張③について                                       婚姻費用については,離婚時の財産分与において当事者の一方が婚姻継続中に過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができると解される(最高裁昭和53年11月14日判決)。本件で婚姻費用減額の申立て以前に遡って清算する必要性は乏しい。また,非嫡出子に対する扶養義務を果たすために婚姻費用の減額を認めることは,不貞行為を助長ないし追認するのも同然であり,信義誠実の原則に照らし,認められない。

夫の主張④について                                       現実の稼働状況に関する妻の主張は十分信用できる。 

*本決定の判断

夫の主張①②については特に述べず。                               夫の主張③について,「事情の変更」とは,協議又は審判の際に考慮され,あるいはその前提とされた事情に変更が生じた場合をいい,協議または審判の際に既に存在し,判明していた事情や,当事者が当然に予想し得た事情が現実化したにとどまる場合を含むものではない,と述べた上で,本件については,前件調停成立後に3人の子が出生し,夫が認知しているので,夫が扶養義務を負う未成年の子の数に変更が生じたことが認められ,「事情の変更」に該当すると判断。                          妻は,重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは,信義則に反すると主張するが,3人の子は2人の嫡出子と同様,夫から等しく扶養を受ける権利を有するから,妻の主張は採用できない。    結論として,3人の婚外子の存在を前提に,双方の収入から婚姻費用を算定し,婚姻費用の減額を認めたが,婚姻費用減額の始期については,夫が主張する事情の変更が生じた時期ではなく,減額の申立てをした平成26年〇月とした。

*考察

どんな事情で出生しても,生まれてきた子どもに責任はなく,子どもは親から扶養を受ける権利があるということが大前提になっているものと思われます。そのため,本件では新たに生まれた子どもたちへの扶養義務が生じたことは,婚姻費用の減額を認めるべき事情の変更にあたると判断したものです。       事実関係は異なりますが,子どもの扶養義務の重要性を採用した裁判例として,大阪高裁平成28年3月17日決定があります。この決定は,不貞行為に及んだ妻が子どもを連れて別居し,夫に婚姻費用の分担を求めた事案です。主に別居した原因が妻の不貞行為にあり,妻の生活費に相当する部分は信義則から認められませんでしたが,子の養育費相当分については婚姻費用の支払いを認めています。            個々の事情にもよりますが,事情の変更があった場合には,調停や審判で決まった婚姻費用について減額が認められる場合もあります。

                                              以上

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